飲み薬(内服薬)
爪水虫の治療で中心になるのが飲み薬です。日本で爪白癬に使われる経口抗真菌薬は3剤あり、用法・推奨度・必要な検査がそれぞれ違います。いずれも医師の処方が必要な医療用医薬品です。
3剤の比較
| 一般名 | 用法(ガイドラインの記述) | 推奨度 | 検査 | 相互作用 |
|---|---|---|---|---|
| テルビナフィン | 125 mg/日を6カ月連続内服 | A(CQ5) | 定期的な血液検査を行う必要がある | 併用注意薬は少数。併用禁忌薬はない |
| イトラコナゾール | 400 mg/日、1週間投与後3週間休薬を1サイクルとして3サイクル(パルス療法) | B(CQ6) | ガイドラインに血液検査の指定は書かれていない(下の注を参照) | 多くの併用禁忌薬と併用注意薬に注意する |
| ホスラブコナゾール | 100 mg/日を12週間内服 | A(CQ7) | 投与中の血液検査は義務付けられていないが、肝機能障害を生じることがあるので肝機能検査を行うことが望ましい | CYP3Aで代謝される薬剤・ワルファリンは併用注意。併用禁忌薬はない |
学会のQ&Aは、これら3剤とも肝機能などの副作用の出現を避けるために、治療前と治療開始後2カ月は月1回の血液検査を行いながらの内服になる、と説明している。[5]
飲み薬にはイトラコナゾール、テルビナフィン、ラブコナゾール(ネイリン)があり、ネイリン以外はジェネリック薬が発売されています。
— 皮膚科Q&A Q23 爪白癬(爪の水虫)の治療はどのようにするのですか?[5]
販売名が出てくるのは、学会の資料がその販売名を書いている場合に限っている。上の引用は日本皮膚科学会の皮膚科Q&A Q23の文で、用法についても「ネイリンは1日1回1錠を12週間内服した時点で、改善の度合いを観察し、治療法の評価をすることになります」と書かれている。[5]
一般名の表記が資料によって違う。皮膚科Q&A は「ラブコナゾール」、診療ガイドライン2025は「ホスラブコナゾール」と書いている。このサイトの地の文はガイドラインの表記にそろえている。
イトラコナゾールには多くの併用禁忌薬がある。飲んでいる薬やサプリメントがある場合は、受診時にすべて伝える対象になる。
報告されている数字
ガイドラインが引いている臨床試験の結果から、数字をそのまま載せる。試験の背景が異なるため、薬剤どうしを直接比べられる数字ではない。[2][3][4]
- テルビナフィン:国内のRCTで、爪混濁比3以上の患者に125 mgを1日1回24週間投与し、臨床所見の改善率88.1%、菌学的治癒率83.3%、副作用発現率11.9%。1日2回投与と比べて全ての項目で有意差はなかった。
- イトラコナゾール:足爪白癬を対象とした基剤対照RCTで、パルス療法群(37例)の臨床的改善率77%・菌学的治癒率73%・全般改善度68%に対し、プラセボ群(36例)はそれぞれ0%・13%・0%。
- ホスラブコナゾール:直接鏡検陽性の153例(重症例を除き中等症まで)を対象に1日1回12週間内服し、その後36週間無治療で経過観察した結果、完全治癒率は59.4%(60/101)、対照群は5.8%(3/52)。
- ホスラブコナゾールの実臨床の後ろ向き研究(350例)では、投与開始48週後の臨床的治癒率78.9%(86/109)、完全治癒率57.8%(63/109)、臨床的治癒までの期間の中央値41.9週。副作用は350例中64例(18.3%)に認められ、15例が投与を中止した。
完全治癒率とは、ガイドラインの記述では臨床的治癒かつ菌学的治癒を満たした割合である。菌学的治癒率(直接鏡検陰性かつ培養陰性)とは別の指標で、同じ試験でも数字が大きく違う。[6]
報告されている副作用
- テルビナフィン:重篤な肝障害、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少が報告されているため、定期的な血液検査の実施が必要。重症薬疹や横紋筋融解症があらわれることがあるので、観察を十分行う。
- ホスラブコナゾール:内服早期では嘔気・下痢などの消化器症状や薬疹が報告されている。重篤な肝機能障害も報告されているため、投与前および投与中の肝機能検査を行うことが望ましい。
ガイドラインは、イトラコナゾールの後発品の品質について、必ずしも先発品と同等とは言えないという報告があることにも触れている。学会のQ&Aも、ジェネリック薬の中には血中濃度が十分上がらず効果が不十分な場合も知られていると説明している。[1][5]
効果が足りないときの判断時期
ホスラブコナゾールについては、初回治療を完遂した後に追加治療をする際の判断基準を検討したRCTが報告されており、治療開始24週の時点で混濁比減少率が55%未満であれば追加治療を検討するのが妥当だと結論づけられている。[4]
一般に、爪白癬は3カ月を目安に治療効果を評価し、改善がみられない場合は薬剤耐性株の可能性を考慮して薬剤の切り替えを行う必要があるとされている。[7]
このページに商品の紹介を置かない理由
ここで扱っている3剤はいずれも医師の処方が必要な医療用医薬品である。医療用医薬品は一般の人に向けて広告することが認められていない。そのため、このページには商品の枠も、診療やオンライン診療への成果報酬型のリンクも置かない。
このページの出典
- 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同 皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会雑誌 135巻13号 2511-2566頁、2025年) p.2516「1.2 爪白癬」治療(内服・外用・その他)
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/19e2ae577a696f81acf51fdcc0173e2c.pdf(2026-10-10 確認) - 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同 皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会雑誌 135巻13号 2511-2566頁、2025年) p.2538-2539 CQ5(テルビナフィン内服)
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/19e2ae577a696f81acf51fdcc0173e2c.pdf(2026-10-10 確認) - 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同 皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会雑誌 135巻13号 2511-2566頁、2025年) p.2539-2540 CQ6(イトラコナゾール内服)
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/19e2ae577a696f81acf51fdcc0173e2c.pdf(2026-10-10 確認) - 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同 皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会雑誌 135巻13号 2511-2566頁、2025年) p.2540-2541 CQ7(ホスラブコナゾール内服)
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/19e2ae577a696f81acf51fdcc0173e2c.pdf(2026-10-10 確認) - 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 白癬(水虫・たむしなど)」 Q23 爪白癬(爪の水虫)の治療はどのようにするのですか?
https://qa.dermatol.or.jp/qa10/q23.html(2026-10-10 確認) - 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同 皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会雑誌 135巻13号 2511-2566頁、2025年) p.2537-2538 CQ3(エフィナコナゾール爪外用液)
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/19e2ae577a696f81acf51fdcc0173e2c.pdf(2026-10-10 確認) - 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同 皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会雑誌 135巻13号 2511-2566頁、2025年) p.2530「薬剤耐性白癬の治療」
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/2013/08/19e2ae577a696f81acf51fdcc0173e2c.pdf(2026-10-10 確認)